ずっしーさんの「魔法の伴奏」の動画。
「ビートたけしの知らないニュース」に取り上げられた・・・!?
すごい。twitterなどで拡散されまくっただけではなく、テレビにまで取り上げられるって・・・そんなコトある??
放映後、再生回数はさらに上昇。コメントも山のように。
コレはちょっと、ただごとではありません。いろいろ思うこともあるので、綴っていこうと思います。
「黒鍵」も「ペンタ」も目新しいモノではない
この「魔法の伴奏」の動画は、音楽理論的に見るとなにも目新しいことをやっているワケではありません。
- 黒鍵だけを弾けばペンタトニックスケールになる
- ペンタトニックスケールはコード進行に左右されずに弾ける
理論的に言うとこんな感じです。
黒鍵だけを弾けばペンタトニックスケールが鳴るというコトはよく知られている話です。ミュージシャンの間では。
ペンタトニックスケール(五音音階)自体、遥か昔から存在するスケールですし、世界各国の民謡や民族音楽で使用されてきた「既存の概念」です。
「黒鍵だけを弾けばペンタトニックスケールになる」なんてコトを今さら誰かが動画に挙げたとしても、テレビに取り上げられるほど話題になりません。
すでにそのようなコンテンツは存在しますし、それ自体は新しくもなんともありませんから。
では、なぜこの「魔法の伴奏」のYoutube動画がtwitterで拡散され、再生されまくり、さらにはテレビにまで取り上げられるようになったのでしょうか?
それはもう「魅せ方が秀逸だったから」としか考えられません。
「魔法の伴奏」という魅せ方
どちらかと言うと魔法的なのは「伴奏」ではなく「ペンタトニックスケール」のほうだと思うんですが、ずっしーさんは「魔法の伴奏」という表現を使うことにより、魔法がかっている対象を「伴奏」のほうにズラしました。
「黒鍵だけをどんなに適当に弾いても曲に聞こえる伴奏」
と聞けば、「そんなすごい伴奏があるのか!」と思っちゃうでしょう。
そしてその「魔法の伴奏」に合わせてピアノの黒鍵を適当に弾くだけで、曲になってしまう・・・
「これはすごい!」「面白い!」そんな驚きと衝撃を与えることになります。
まあ、ミュージシャンならすぐに「ペンタか」と察することができるでしょうが、音楽にあまり詳しくない人にとっては本当に魔法のように感じるでしょうね。
そのような人は、もちろんペンタトニックスケール自体知りませんし、ペンタトニックスケールがコード進行にとらわれずに違和感なく聴こえるというコトも知りませんから。
- 「魔法の伴奏」というワクワクするようなネーミング
- 「黒鍵だけ」というギミック性
という要素によって、
「黒鍵だけ弾くとペンタトニックスケールになる」
というただの既存の概念が、
「魔法の伴奏に合わせて黒鍵を適当に弾くだけでカッコいいフレーズになる」
というまったく新しい価値をはらみながら鮮やかに席巻した、と言えるのではないでしょうか。
これはもう、魅せ方の勝利としか言いようがありません。
新しいターゲットをも開拓した
ずっしーさんの「魔法の伴奏」の動画は、
「適当に弾いてもカッコいいアドリブを弾ける」
という新しい価値を生み出しただけではなく、それによって新しい層のターゲットを刺激したという事実にも着目すべきではないでしょうか。
- 普段から演奏に携わっていない人
- 音楽の知識がない人
- ピアノなんて弾けないと思っている人
- 音楽にそんなに興味がない人
このような人たちに「音楽って面白い!」という衝撃を与えることになりました。
普通は音楽系の動画って、音楽をやっている人や音楽に興味がある人にターゲットが絞られることが多いと思います。
- 弾いてみた
- 歌ってみた
- 楽器のテクニックやハウツー
- 作曲やアレンジのテクニックやハウツー
- 超絶技巧
など。どれも音楽に興味がある人がなにかしらの意図を持って検索してたどり着く動画でしょう。
でもずっしーさんの動画は、そのような一般的な音楽系の動画ではリーチできない「音楽にそんなに興味がない層」をも取り囲んでしまったんです。
たとえば「ギターの超絶技巧の動画」を見せられても、ギターに興味がない人にはインパクトがありません。興味を持つのはおもにギターに関わっている人たちです。
でも「魔法の伴奏」は、音楽にそんなに興味がない人にも驚きと新鮮さを与える力を持っています。
- 音楽ってこんなに面白かったの??
- コレならわたしにも演奏できる!
こんな風に。すごいですよね。
「適当に弾いてもカッコいいアドリブを弾ける」という新しい価値が生まれることにより、「非音楽系」という新しいターゲットを開拓してしまったんです。
この動画をきっかけに音楽や演奏に興味を持った人は多いと思います。そう考えると、この「魔法の伴奏」は多大な価値を生み出していますよね。
魅せ方次第で面白いコンテンツになる
なにかを表現したい、創作したいと思ったとき、ついつい「今までにない新しいモノ」をつくろうとしがちです。
- 誰も弾いたことがないギターの超絶技巧を身につけよう
- 誰も聴いたことがない新しい曲をつくろう
それを否定するワケではありませんが、視点をちょっと変えてみるのもいいんじゃないかと。
既存の知識や概念の「魅せ方」を工夫することによっても、新しい価値を生み出せる
というコトを、ずっしーさんの一連のムーブメントから学びました。
コレは本当に勉強になりましたし、モノづくりにおける大きなヒント、いや啓蒙になります。
魅せ方です、魅せ方。「新しいことをやる」ために、別に新しい概念を生みだそうとする必要はありません。既存の概念や知識を元ネタに、
- どう魅せるか?
- どんな切り口で語るか?
を工夫するだけで、こんなにも面白いコンテンツを生み出せるんですから。